第221回自然言語処理研究会優秀研究賞

自然言語処理研究会では、自然言語処理に関する研究開発を幅広くタイムリー
に奨励することを目的として、第220回研究会から新しい表彰制度「自然言語
処理研究会優秀研究賞」を設置します。これは、各回の研究会において投稿さ
れる予稿の中から新規性、有用性、斬新性、将来性等の点で特に優れたものを
表彰するものです。表彰件数は全体の10%程度とし、研究会の幹事と運営委員
からなる選考委員会が選考します(選考委員はCOIを考慮して選出し、幹事に
COIがある場合にはCOIのない幹事または運営委員にて選考委員会を開催します)。
選考は事前に行い、研究会開催時の最後に発表・表彰します。また、表彰論文
は原則として情報処理学会論文誌ジャーナルに「推薦論文」として推薦されます。

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「逐次最適解更新による頑健な単語分散表現の学習方式」
鈴木 潤,永田 昌明 (日本電信電話株式会社 NTT コミュニケーション科学基礎研究所)

近年注目を浴びている分散表現の学習に適用できる学習方式を提案しています。
非凸なLBLモデルの学習が双凸最適化問題になっていることを示し、解析的に求
まる最適解を繰り返し求めることで、より良い解を見つけています。学習方式
にいくつか良い性質があることを示し、実験により、従来法よりも良い解が求
まることを示しています。

「対数的共起ベクトルの加法構成性」
田 然,岡崎 直観,乾 健太郎 (東北大学)

分布表現におけるベクトルの足し算が共起の良い近似になっていることを示し、
特異値分解による単語埋め込みはSkip-Gramなどの最先端の分散表現に匹敵する
ことを実験により示しています。周辺文脈にジップ則が成り立つことを仮定す
ると上記の加法構成性が成り立つことが証明でき、実験によって、周辺文脈に
ジップ則が成り立つことを示しています。ベクトル表現による意味論に関する
理論的な研究で、非常に面白いと思います。

推薦論文について、前者は研究・論文としての完成度の高さが評価されました。
一方後者は、発想の意外性、理論的な面白さが評価されており、対照的な良さ
を持った論文と評価されました。そのため今回は2件推薦したいという結論に至
りました。
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選考基準・選考方法について暫くは試行錯誤の必要があると思いますが、制度
の不備を恐れて設置を躊躇するよりは、たとえ不完全なものであっても、優れ
た研究を賞賛する機会を少しでも増やし、研究コミュニティ全体を盛り上げて
いく方が良いと考えています。自然言語処理を愛するすべての人にとって有益
な賞に育てていきたいと考えていますので、ご意見、アイデアなどお寄せいた
だければ幸いです。

情報処理学会自然言語処理研究会研究運営委員会

主査:
乾 健太郎 東北大学

幹事:
荒瀬 由紀 大阪大学
岡崎 直観 東北大学
木村 俊也 ミクシィ
小町 守 首都大学東京
森 信介 京都大学

運営委員:
赤峯 享 日本電気
浅原 正幸 国立国語研究所
荒牧 英治 京都大学
石野 亜耶 広島経済大学
金丸 敏幸 京都大学
古宮 嘉那子 茨城大学
高橋 哲郎 富士通研究所
新里 圭司 楽天
鈴木 祥子 日本アイ・ビー・エム
数原 良彦 リクルートホールディングス
高橋 哲郎 富士通研究所
高村 大也 東京工業大学
堂坂 浩二 秋田県立大学
徳永 拓之 Preferred Infrastructure
西川 仁 日本電信電話
二宮 崇 愛媛大学
橋本 力 情報通信機構
藤田 早苗 日本電信電話
牧野 貴樹 グーグル
松崎 拓也 名古屋大学
ミハウ プタシンスキ 北見工業大学
宮尾 祐介 国立情報学研究所
村脇 有吾 九州大学
若木 裕美 東芝
Kevin Duh 奈良先端科学技術大学院大学