
情報処理学会の自然言語処理研究会(NL)では,研究成果の発表・議論が活発に行われています.今後の言語処理研究に革新をもたらすような優れた発表が沢山ありますが,個々の研究は大きなプロジェクトの一部となっていて,短時間での発表では研究の全体像が掴みづらいことがあります.
そこで,非常に好評であった、一昨年の第230回研究会「自然言語処理の中長期研究構想を論じる会」と同様のシンポジウムを開催します.本シンポジウムでは,自然言語処理および関連分野で長期にわたり第一線の研究を推進してきた研究者に今後の研究構想の大きな絵を語っていただき,言語処理が今後進むべき方向性について一段高い視点からの議論を狙います.
なお,本シンポジウムはすべて招待講演とし,一般発表の募集はありません.また,同時動画配信も行いませんので,ぜひ会場までお越しください(事前参加申し込み不要です).
- 日程: 2019年3月3日(日)
- 時間: 13:25-17:10
- 会場: 東京工業大学大岡山キャンパス 東工大蔵前会館 くらまえホール (アクセス)
〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1
(東急大井町線・目黒線 大岡山駅から徒歩1分) - 参加費(情報処理学会の会員種別により異なります):
- NL研登録会員: 無料
- ジュニア会員: 無料
- 学生会員: 500円
- 名誉会員,正会員,賛助会員: 1,500円
- 非会員(学生も含む): 2,500円
プログラム
13:00 開場
13:25-13:30 開会
13:30-14:10 : 対話システムのあるべき姿
東中竜一郎先生(NTT)

人間と会話をするコンピュータのことを対話システムという.スマートフォン上の音声エージェントやパーソナルロボット,AIスピーカーなど対話システムが身の回りに増えてきた.近年は,深層学習の適用が進み,大規模な対話データから対話システムをEnd-to-Endで構築する営みや,対話システムに関する各種コンペティションが盛り上がりを見せている.しかし,これらの営みによって,対話システムは本当にそのあるべき姿に近づいているのだろうか?本講演では,自身のこれまでの雑談対話の研究,現在の対話研究のトレンドなどを紹介しつつ,複数の観点からこれまでの対話システム研究を位置づける.そして,その上で,私の考える対話システムのあるべき姿を示し,それに向けた対話システム研究の進め方について提案をしたい.
- 講演動画 (Youtube)
- 発表資料
- 関連資料 (映像情報メディア学会誌 Vol. 73, No. 2, <技術解説欄>「最近の対話システム事情~深層学習・データセット・コンペティションの観点から~」掲載)
14:10-14:50 : 構文や語彙意味論の分析成果をプログラムとして具現化する言語パターンマッチAPIの可能性
竹内孔一先生(岡山大)

本発表ではend-to-endを利用できない場合の言語処理のモデリングについて議論し,言語分析の処理への応用を検討する.まずテキストマイニングのような人とシステムが協働して課題を解くタスクを例に,処理システムに理解可能な操作体系や記号体系が必須であることを指摘する.次に広告や質問応答なども同様に操作体系や辞書が整備されている事例を紹介する.操作体系の例としてIBM Watsonをとりあげ,再帰的な言語パターンマッチを構築することで情報取得する機構を説明する.こうした実システムの成功例を受けて,言語分析に基づく構文や語彙意味論における成果を言語パターンマッチAPIとしてプログラム化すること(各レベルでの曖昧解消モデルを開発し,集約して操作可能にすること)が研究の発展だけでなく,研究成果が社会に還元されるサイクルを生み出す可能性について述べる.
14:50-15:10 : 休憩
15:10-15:50 : 音声言語の研究と今後の展開
中村哲先生(NAIST)

音声言語の研究は話し言葉を対象にしている。人対人、人対機械の音声翻訳や対話は話し言葉を通して行われている。話し言葉は、意図を即時に伝達するための手段で人間にとって、発話の生成や理解を即時に行う必要があり、記録を目的とし読み書きに多くの時間を使うことができる書き言葉と異なっている。即時性を達成するために、人間は、文脈の利用、発話文の単純化、複数のモダリティの利用を行っている。
一方で、これまで行われてきた音声翻訳、音声対話などの研究は、書き言葉に対して構築された処理系の前後に音声処理を加えただけのものが多かった。本発表では、話し言葉によるコミュニケーションの自動化や支援を目指し、著者のグループが進めている、音声の認識と合成を一つの枠組みで構成するMachine Speech Chain 、自動音声通訳へ向けた、同時音声通訳、強調・感情などのパラ言語情報を伝える音声通訳、音声画像翻訳などの研究について紹介する。
15:50-16:30 : 文章生成研究は楽しい
佐藤理史先生(名古屋大)

解析系の研究に比べ、生成系の研究は極端に少ない。生成するテキストの長さも、数文以下であるものがほとんどである。どうすれば長い文章を機械的に作り出すことができるか。コンピュータに小説は書けるのか。そもそも文章を作り出すプロセスとはどんなプロセスなのか。文章生成にまつわる深い謎とその解明に取り組む楽しさについて、私見を述べる。
16:30-17:10 : 自然言語テキストの理解と評価
乾健太郎先生(東北大/理研AIP)

言語の理解に必要とされる知識と推論。知識のボトルネックが大規模知識獲得やクラウドソーシングで解消できる可能性が出てきたとすれば、次はいよいよ知識と推論を言語理解に繋げる研究に正面から取り組める。おもしろい時代になってきた。もちろん、一筋縄にはいかない。うまく進めるには、マイルストンとなるうまいタスク設定が必要である。こうした意識から我々のグループでは、理解能力を直接的に測る読解タスクに加え、「言語アセスメント」を出口の柱にすえたプロジェクトを開始した。言語アセスメントは、短答式記述問題の答案、論述エッセイやディベート、第二言語学習者の作文・会話など、人が産出する自然言語の質を評価し、添削・解説するもので、究極的には知識と推論を含む言語理解を必要とする一方、問題を限定しながら実際の応用サービスに繋げることもできる格好の応用領域である。本講演では、プロジェクトのねらいと取り組みを紹介しながら課題と展望を論じる。
17:10 閉会
■照会先
横野光(富士通研)
E-mail : yokono.hikaru (at) fujitsu.com
★研究会への登録をお勧めします
年に2回以上の参加を見込まれる方は,研究会に登録される方が(ほぼ)お得になります.研究会登録は情報処理学会のウェブサイトから行えます.
NL研究会幹事団
主査:
- 関根聡 (理研)
幹事:
- 荒瀬由紀 (大阪大学)
- 木村俊也 (株式会社メルカリ)
- 進藤裕之 (奈良先端科学技術大学院大学)
- 中澤敏明 (東京大学)
- 西川仁 (東京工業大学)
- 桝井文人 (北見工業大学)
- 横野光 (株式会社富士通研究所)
運営委員:
- 浅原正幸 (国立国語研究所)
- 荒牧英治 (奈良先端科学技術大学院大学)
- 石野亜耶 (広島経済大学)
- 内海慶 (株式会社デンソーアイティーラボラトリ)
- 内田ゆず (北海学園大学)
- 小林隼人 (Yahoo! JAPAN 研究所)
- 佐々木稔 (茨城大学)
- 笹野遼平 (名古屋大学)
- 貞光九月 (フューチャー株式会社)
- 佐藤敏紀 (LINE株式会社)
- 数原良彦 (Recruit Institute of Technology)
- 高村大也 (産業技術総合研究所/東京工業大学)
- 土田正明 (株式会社コトバデザイン)
- 徳永拓之 (LeapMind株式会社)
- 二宮崇 (愛媛大学)
- 羽鳥潤 (株式会社 Preferred Networks)
- 藤田早苗 (日本電信電話株式会社)
- 牧野拓哉 (株式会社富士通研究所)
- 松崎拓也 (名古屋大学)
- 松林優一郎(東北大学)
- ミハウ・プタシンスキ(北見工業大学)
- 村脇有吾 (京都大学)
- 若木裕美 (ソニー株式会社)