第247回研究会は通常とは趣向を変え「他分野からの自然言語処理への期待」と題したシンポジウムとして企画します.本シンポジウムでは自然言語処理に関連する他分野の研究者から,ご自身のご研究の紹介と自然言語処理への期待を語っていただき,他分野から期待されていることを踏まえて,今後の自然言語処理の研究に役立てていきたいと思っています.
なお,本シンポジウムはすべて招待講演とし,一般発表の募集はありません.
日程: 2021年3月3日(水)
時間: 12:55 – 17:30
開催方法:オンライン開催(Zoom)
参加費(情報処理学会の会員種別により異なります):
NL研登録会員: 無料
ジュニア会員: 無料
学生会員: 500円
名誉会員,正会員,賛助会員: 1,500円
非会員(学生も含む): 2,500円
参加登録は情報処理学会のご自身のマイページから可能です.
マイページの開設方法などは https://www.ipsj.or.jp/member/event_moshikomi.html をご覧ください.
※参加申込はマイページより2/24頃開始予定です.
■ プログラム
12:45 開場
12:55-13:00 オープニング
13:00-13:40 マーモセットを用いた言語学習メカニズム理解のための神経科学
下郡智美 先生 (理研CBS)

近年の研究から新世界ザルであるコモンマーモセットは親子での鳴きかわしの間に特定のルールを学び、そのルールを用いてコロニーでコミュニケーションをとることが明らかにされている。言語学習能力の獲得はヒトが他の霊長類に比べて飛躍的に進化し、言語コミュニケーション能力はヒトの社会性において重要な役割を占めていることは疑いの余地がない。そこで、マーモセットが高度な応答コミュニケーション獲得を解明する次世代モデル動物として利用することができるのかを見極めるため、その生体と鳴き交わしルールが形成される様子を紹介する。
13:40-14:20 認知行動支援からの自然言語処理への期待
大武美保子 先生 (理研AIP)

人工知能が人間の知能を育んだり、人間の知能と人工知能が相互に補完し合ってより高度な知能を実現したりする方法を明らかにすることが、これまで以上に重要になりつつある。講演者が主宰する理化学研究所認知行動支援技術チームでは、特に、社会生活を送る上で必要な人間の知能が損なわれる高齢者の認知機能低下と認知症を予防するために、認知予備力を高める認知行動支援技術を重点的に開発している。写真を用いた会話支援技術、共想法に立脚した会話支援AI を開発し、認知行動支援システムに実装し、人間の認知面、心理面に与える影響を評価している。この中で、収集した会話データの処理や、会話データを利活用した対話システムの開発において、自然言語処理技術を活用する取り組みについて紹介する。そして、自然言語処理研究者との共同研究への期待について述べる。
14:20-14:35 休憩
14:35-15:15 ロボットを用いた対話理解研究
小川浩平 先生 (名古屋大学)

人とロボットの対話研究では、いかに正確に発話を認識し、破綻のない返答を生成するシステムをどのように構築するかが注目されてきた。一方、人に酷似したロボット、アンドロイドを用いた対話研究では、従来の対話の定義、すなわち認識し返答する、といった枠組みの外側で、人とロボットの関係性が成立する事例が多く確認されている。本講演では、これまでの研究の事例の中でも、特に実世界でのロボットの運用事例で分かった知見を紹介しなかがら、今後の自然言語処理及び、対話研究に期待することについて議論する。
15:15-15:55 画像認識からの自然言語処理への期待
原田達也 先生(東京大学)

深層学習をはじめとした機械学習の発展により,コンピュータビジョン(CV)と自然言語処理(NLP)で利用される手法の共通化が進み,CVとNLPの融合研究が従来よりも容易になりつつある.また,シンボルグラウンディング問題解決の糸口としても,この二つの分野の融合研究が注目を集めており,実際に,CVの主要会議においてVision + Languageといった課題領域として人気を博している.本講演では,近年のこの融合領域の潮流と弊研究グループの取り組みを紹介し,画像認識からの自然言語処理への期待について私見を述べる.
15:55-16:10 休憩
16:10-16:50 AIの安全・信頼と自然言語処理を考える
荒井ひろみ 先生(理研AIP)

AIの安全・信頼のために,プライバシー保護や公平性・説明性が重要視されている.パーソナルデータなどの機微な情報を利用するために,プライバシーリスクの評価や,データを安全に分析・収集・共有するためのプライバシー保護技術がある.また近年機械学習モデルの公平性が着目されている.データに含まれるバイアスの影響により機械学習モデルが差別的な振る舞いをすることが問題視されており,バイアスの分析や調整を行う方法が提案されている.さらに複雑化するAIについてユーザーに説明をするために,機械学習モデルの振る舞いを説明する方法や,プライバシーポリシーの正確さやユーザビリティの検証などが行われている.本講演ではこれらの研究について講演者のこれまでの研究を交えつつ紹介し,このような技術を言語に適用する際の課題や,自然言語処理との連携の可能性を議論する.
16:50-17:30 統語的多義性と韻律情報の理解:大人と子供の比較
広瀬友紀 先生(東京大学)

自然言語処理研究と心理言語学研究においては,その目指す方向性は異なることもあれど,着目する現象は共通することも多く、統語的多義性もその一つである。本講演では、[a[b c]] vs. [[a b ]c]という枝分かれ多義性をとりあげ、その解釈バイアスや、また音声言語における韻律情報の役割や韻律情報自体の多義性について、成人と子供の処理のありかたの違いという観点から検討する。入力の漸時性や、処理において用いられる情報の発達段階に応じた変化等について考え、遠回りをしながらも、自然言語処理研究と心理言語学研究がお互いにどのような示唆をもたらすかという問いにもつなげることができたらと考える。
■ 照会先
木村泰知(小樽商科大学)
E-mail: kimura (at) res.otaru-uc.ac.jp
■ 研究会幹事団
主査:
関根 聡 理化学研究所
幹事:
内海 慶 株式会社デンソーアイティーラボラトリ
木村 泰知 小樽商科大学
古宮 嘉那子 茨城大学
笹野 遼平 名古屋大学
進藤 裕之 奈良先端科学技術大学院大学
横野 光 株式会社富士通研究所
運営委員:
石垣 達也 産業技術総合研究所
内田 ゆず 北海学園大学
江原 遥 静岡理工科大学
大内 啓樹 理化学研究所/東北大学
亀甲 博貴 京都大学
小林 暁雄 農業・食品産業技術総合研究機構
斉藤 いつみ 日本電信電話株式会社
佐々木 稔 茨城大学
須藤 克仁 奈良先端科学技術大学院大学
田村 晃裕 同志社大学
成松 宏美 日本電信電話株式会社
西田 京介 日本電信電話株式会社
羽鳥 潤 株式会社 Preferred Networks
増村 亮 日本電信電話株式会社
松林 優一郎 東北大学
馬緤 美穂 ヤフー株式会社
水本 智也 フューチャー株式会社
三輪 誠 豊田工業大学
森田 一 株式会社富士通研究所
谷中 瞳 理化学研究所
吉川 克正 株式会社コトバデザイン
鷲尾 光樹 東京大学