優秀研究賞

優秀研究賞について

自然言語処理研究会では、自然言語処理に関する研究開発を幅広くタイムリーに奨励することを目的として、第220回研究会から新しい表彰制度「自然言語処理研究会優秀研究賞」を設置しました。これは、各回の研究会において投稿される予稿の中から新規性、有用性、斬新性、将来性等の点で特に優れたものを表彰するものです。表彰件数は全体の10%程度とし、研究会の幹事と運営委員からなる選考委員会が選考します(選考委員はCOIを考慮して選出し、幹事にCOIがある場合にはCOIのない幹事または運営委員にて選考委員会を開催します)。選考は事前に行い、研究会開催時の最後に発表・表彰します。また、表彰論文は山下記念研究賞の選考の際にも参考とし、原則として情報処理学会論文誌ジャーナルに「推薦論文」として推薦されます。

優秀研究賞受賞一覧

研究会開催日 受賞研究
2016年12月 多層リカレントニューラルネットワークを用いた日本語述語項構造解析
大内啓樹, 進藤裕之, 松本裕治 (奈良先端科学技術大学院大学)(優秀賞選考委員コメント)
日本語述語構造解析では、形態素解析にはじまる言語処理パイプライン処理によって得られた解析結果を用いるため、各ステップにおける誤りの影響をうけるおそれがある。本研究では、単語の表層情報のみを用いてニューラルネットワークベースの手法を提案している。提案手法は日本語述語構造解析の最高精度を達成しており、本分野をリードする重要な研究になると考えられるため、優秀研究賞に推薦する。また他研究者が追実験を行いやすいようソースコードを公開していることも高く評価できる。
2016年12月 平易なコーパスを用いないテキスト平易化のための単言語パラレルコーパスの構築
梶原智之, 小町 守 (首都大学東京)(優秀賞選考委員コメント)
テキスト平易化の研究は盛んに行われているが、いずれもパラレルコーパスを必要とするアプローチであり、パラレルコーパスが存在しない言語には適用できないという課題があるが、あらゆる言語においてパラレルコーパスを作成することは現実的に困難である。本研究は対象コーパスからテキスト平易化のためのパラレルコーパスを構築する方法を提案しており、任意の言語、ドメインにおいてテキスト平易化を実現する枠組みを提供し、テキスト平易化研究の可能性を広げる価値のある研究であるため、優秀研究賞に推薦する。
2016年9月 該当なし
2016年7月 複数時点の単語出現頻度を扱う時系列データモデリング
磯 颯, 若宮 翔子, 荒牧 英治 (奈良先端科学技術大学院大学)(優秀賞選考委員コメント)
Twitter記事からのインフルエンザ流行予測を行っている。ソーシャルメディアを言語解析し現実世界の動向を把握するこのようなタスクは実社会における有用性が高い。手法のポイントはTweetに出現する単語ごとに目的事象との適切な時間ギャップを考慮したモデリングであり、これによって現状予測精度の向上が見られた点、また、流行の将来予測を可能にする点で興味深い。検証例が少数であり、今後のより充実した実験的評価が望まれるが、将来の手法の改良・発展が期待できる。
2016年5月 無限木構造隠れMarkovモデルによる階層的品詞の教師なし学習
持橋 大地 (統計数理研究所), 能地 宏 (奈良先端科学技術大学院大学)(優秀賞選考委員コメント)
従来のHMMや無限HMMが隠れ状態をフラットな構造として扱っていたのに対し、本稿では隠れ状態を階層構造として推定可能とするiTHMMを提案し、階層的な品詞の教師なし学習を可能とした。提案法は、自然言語処理はもとより情報科学一般の様々なタスクに適用できるHMMの本質的な拡張であり、多くの研究者にとって有用性が高い。また、実験・分析において多様な観点から有効性が検証されている点、実応用を見据えた半教師あり学習への拡張についても検証されている点、分かりやすさに十分配慮して書かれている点を合わせて鑑みても、論文としての完成度が高く、優秀研究賞に値する。
2016年1月 分散表現に基づく選択選好モデルの文脈化
大野 雅之, 井之上 直也, 松林 優一郎, 岡崎 直観, 乾 健太郎 (東北大学)(優秀賞選考委員コメント)
ある特定の文脈における名詞の意味を、それに先行する文脈における当該名詞の言及のされ方によって捉えるというアイデアは、意味表現の興味深い拡張といえる。実際にそのアイデアを照応解析の性能向上に結びつけた点が素晴らしい。また、本文の記述が論理的で詳細でありながらわかりやすい。 既存研究との詳細な比較など今後の研究の発展が期待される。
2015年12月 格パターンの多様性に頑健な日本語格フレーム構築
林部 祐太,河原 大輔,黒橋 禎夫 (京都大学)(優秀賞選考委員コメント)
本研究では、日本語の格フレームの多様性に対して頑健な格フレームの構築手法を提案している。提案手法は、日本語の言語現象の分析を十分に行った上で導き出したものであり、従来手法に比べて大幅な精度の改善が得られている。評価も40億文の大規模な用例を用いて行っており、信頼性も高い。格フレームは、言語解析の基本処理である述語項構造解析、意味役割付与の精度向上に必要な重要な言語資源である。今後、本手法を用いて構築した大規模な格フレームが利用可能になれば、実用面での貢献も高く、優秀研究賞に値する。
2015年9月 畳み込みニューラルネットワークを用いた複単語表現の解析
進藤 裕之,松本 裕治 (奈良先端科学技術大学院大学)(優秀賞選考委員コメント)
本研究では、畳み込みニューラルネットを用いて複単語表現の同定と品詞タグ付けを同時に行う複単語表現解析手法を提案している。提案手法は複単語表現が連続する単語群から成るか、非連続である単語群から成るかに問わず適用可能であり、また素性テンプレートを不要としつつ、従来手法に比べて高精度な解析精度を達成しており、その有用性は高い。著者らの主張するとおり「文字の組み合わせが単語を構成し、単語の組み合わせが複単語表現を構成する」という言語が持つ階層性を自然な形でモデル化しており、さらなる拡張の可能性も高く、優秀研究賞に値する。
2015年5月 逐次最適解更新による頑健な単語分散表現の学習方式
鈴木 潤,永田 昌明 (日本電信電話株式会社 NTT コミュニケーション科学基礎研究所)(優秀賞選考委員コメント)
近年注目を浴びている分散表現の学習に適用できる学習方式を提案しています。非凸なLBLモデルの学習が双凸最適化問題になっていることを示し、解析的に求まる最適解を繰り返し求めることで、より良い解を見つけています。学習方式にいくつか良い性質があることを示し、実験により、従来法よりも良い解が求まることを示しています。
2015年5月 対数的共起ベクトルの加法構成性
田 然,岡崎 直観,乾 健太郎 (東北大学)(優秀賞選考委員コメント)
分布表現におけるベクトルの足し算が共起の良い近似になっていることを示し、特異値分解による単語埋め込みはSkip-Gramなどの最先端の分散表現に匹敵することを実験により示しています。周辺文脈にジップ則が成り立つことを仮定すると上記の加法構成性が成り立つことが証明でき、実験によって、周辺文脈にジップ則が成り立つことを示しています。ベクトル表現による意味論に関する理論的な研究で、非常に面白いと思います。 推薦論文について、前者は研究・論文としての完成度の高さが評価されました。一方後者は、発想の意外性、理論的な面白さが評価されており、対照的な良さを持った論文と評価されました。そのため今回は2件推薦したいという結論に至りました。
2015年1月 隠れセミマルコフモデルに基づく品詞と単語の同時ベイズ学習
内海 慶,塚原 裕史 (デンソーアイティーラボラトリ), 持橋 大地 (統計数理研究所)(優秀賞選考委員コメント)
本論文では単語の境界と品詞に相当する隠れクラスを同時に学習する教師なし形態素解析手法が提案されており、提案モデルを用いることで分かち書きおよび品詞(隠れクラス)付与を行うことが可能である。品詞の付与は、従来の教師なし形態素解析手法では扱われておらず、手法の新規性・独創性は高い。高速化等の課題はあるが、今後の展開に期待ができる。
2015年1月 意味と構造の構成演算と類似度学習における非線形性
椿 真史,Duh Kevin,新保 仁,松本 裕治 (奈良先端科学技術大学院大学)(優秀賞選考委員コメント)
本研究は文間の意味的類似度を扱うものであり、単語ベクトル空間モデルにおける意味の構成性とカーネル法による非線形類似度学習の2つのアプローチを融合する新規性の高い手法により、シンプルで実装が容易でありながら、既存研究の最高性能に迫る高い性能を実現した点が高く評価できる。論文も新規性や優位性等に関してポイントが明確に述べられており、論文としての完成度も高い。